3.連日開廷に対応する弁護人の態勢について

(1) 現在の刑事訴訟法の運用では、連日開廷が現実化した場合、刑事被告人に十分な弁護を行うことは困難であると思われる。陪審裁判では、起訴とそれに対する罪状認否手続の後、陪審が選任されるまでに、公判に提出される証拠の開示と、そ れに対する相手方の意見表明、および許容性に関する議論が行われ、裁判官が証拠と して採用するかどうかの判断を示す。

 これに対して、わが国の現在の裁判では、証拠開示が十分に行われておらず、 公判開始後に証拠としての申請がなされる場合も少なくない。そのような証拠が開示 されないだけでなく、起訴時にすでに手持ちの証拠が開示されないことも珍しくない。例えば、証人として出廷する者の供述証拠や、被告人本人の自白調書さえも、出廷直前まで開示されないことがよくある。このような状況では、どのような態勢をと っても連日開廷に対応できるはずがない。

(2) また、現状のままでは、弁護人と被告人の打合わせが十分にできない。保釈が権利として認めれている米国に比べ、わが国では被疑者・被告人は原則と して勾留され続け、比較的軽い犯罪で自白して容疑事実を認めない限り、保釈されな い。少なからぬケースにおいて、代用監獄に収容して自白を強制することが行われている。このため、弁護人は被疑者・被告人との接見も制限され、十分に打合せて公判 に対応することが困難である。

(3) それでは、陪審制度が採用された場合、現状をどのように変更すれ ば、連日開廷に弁護人が対応できる態勢になるのだろうか。それほど難しいことではない。刑事訴訟法の理念どおりの裁判を実現すればよいのである。まず、公判前における証拠開示を完全に実施する。立件のために公判に提出する証拠はもとより、警察 ・検察が事件に関して収集した証拠をすべて開示すべきである。それをもとに、公判前に徹底した争点整理を行う。公判は、事前の準備手続に十分な時間をとり、必要な 準備がととのってから開始すべきである。

(4) そして、できるだけ被疑者・被告人の保釈が認められるように法令や手続を改善し、逮捕・勾留を取り調べのために利用しないようにすべきである。取り調べには、弁護人の立会援助権を認めるほか、自由な接見交通が検@側によって妨げ られることがないようにしなくてはならない。これらの改善案に加えて、公設弁護人制度を導入するのが望ましい。

(5) 陪審制度の再導入に伴い、当然のことながら、弁護の在り方、弁護人の態勢は変わる必要がある。しかし、ここで述べたように、裁判の現状で問題が指摘 されている点は、単に弁護士・弁護人の問題というより、裁判のあり方全体の問題なのである。裁判がより良いものに変わろうとするならば、弁護士・弁護士会がそれに対応しようとするのは当然であり、十分に対応できることに疑問はない。連日開廷 は、陪審制度をとる諸外国で実施されており、戦前のわが国の陪審裁判においても特 に問題なく実施されていた事実を指摘しておきたい。